悔しいけど好き
「凪、大丈夫?」

お客様は私の横にしゃがみこみ私の顔を覗き込む。
背中を擦る鷹臣手が止まった。

「あ…うん、大丈夫。(しゅう)くん久しぶり。どうしたの?」

「久しぶりにお前が帰ってくるから俺が呼んだんだ。余計なお世話だったな」

苦笑いの海里兄さんを薄目で睨み、ふっと笑った兄の親友、小笠原周くんの優しい笑みについ見惚れる。

「凪、久しぶりだね?随分見ない内に大人になったな?」

「ちょ…っ、未だに高校生のつもりで見てる?私もう25だよ?」

「ははっ、そうだよね?綺麗になった」

相変わらず甘いことをさらっというこの人は、優しげな目にスッと通った鼻、男らしい面長の輪郭に骨ばった大きな指がさらりと私の頬を撫でる。

「えっ…」

横で鷹臣の声がして振り向くとなにやら湊斗が耳打ちしてる。
その途端背中にあった鷹臣の手が私の腰をぐいっと引いた。

「どうも、凪の彼氏の神城と言います」

「ああ、初めまして、海里の友人の小笠原と言います、よろしく。」

どう見ても好戦的な鷹臣に対し周くんはにこやかに挨拶して私の横に座った。

「まあ、折角だ、周も飲んでけ。ほら凪、ビール注いでやれ」

海里兄さんに急かされおずおずとお母さんが用意してくれたグラスを持った周くんにビールを注いだ。
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