悔しいけど好き
鷹臣はあっという間に家族に溶け込み、お父さんと陽気に話し、警戒してた海里兄さんは笑って飲める口の鷹臣にお酒を注ぎ、弟の湊斗まで手懐けてしまった。
おばあちゃんもお母さんもいい男や~~と目をハートにして甲斐甲斐しくご馳走を進めている。
恐るべし営業スキルと言うのか?話し上手で聞き上手な鷹臣は家族の話題を盛り上げる。

半分、いや、大分呆れた私は一人蚊帳の外でみんなを見ていた。

その時ピンポンとチャイムが鳴り会話が途切れる。
もう夜も9時過ぎだというのに誰が来たんだろう?

「あ、やべ、あいつ呼んでたんだ」

しまったというような顔をした海里兄さんは立ち上がり私に意味ありげに視線を寄越すと玄関に向かった。

ん?何?

海里兄さんの視線に気付きながらも首をかしげて手酌でビールを注ぎ一口飲んだ。
その間にお父さんが鷹臣にどうぞどうぞとビールを注ぐ。
ちょっと、私にも注いでよね!と思いつつまたビールに口を付けると兄さんがお客様を連れて戻って来た。
その後ろのお客様と目が合ってびっくりして吹き出しそうになった。

「ぶっ!げほげほっ!」

「おい凪大丈夫か?」

隣の鷹臣が笑って私の背中を擦ってくれる。
慌てておしぼりを口に持っていき盛大に吹き出すのは何とか堪えた。



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