婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
しかし、私もその甘くとろけるような笑顔とオーラにやられた女の一人だ。
…その笑顔で話し掛けてきてくれるの、凄く嬉しかった。
毎回、胸が跳ねて心が躍り、幸せな気持ちになる。
気に留められていると思って、嬉しかった。
でも、それは…私一人だけじゃない。
この令嬢たちのように…大勢の中の、一人。
そのお姿を目に入れることが出来て嬉しい気持ちなのに。それに付加するかのように、悲しさで胸の痛みがもれなく潜んでいる。奥様計三人。
胸中は、複雑だった。
竜宮での辛かったことを思い出すと、普通に落ち込んでしまい何も頭に入らない。
天帝様のありがたいお話も、天帝様を祝福するお祝いの言葉も、右から左へと擦り抜けて行き、頭に入らないほど。
お祝いの余興に、あの蓮華様が琴や笛の演奏に合わせて素晴らしい歌を披露していたが、それさえもボーッとしながら何も考えずに見ていた。
そんな状態でいると、式典はいつの間にか終わっていた。
「羅沙はこの後夜会出るの?」
「え、えっと…」
式典も終わり、捌けていく人の流れを目にしていると、沙那ちゃんにそんなことを質問されるが、私は歯切れ良く返事出来ないでいた。