婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!
でも、そんなことを思ったら…。
《しかし、何故竜王様は貴女を正妃として迎え入れたのか、理解に苦しみます》
…ダメでしょう?!
「羅沙!」
お兄様の声までもが背中の方角から小さく聞こえたが、そんなの構っている場合じゃない。
瞬く間に走り抜けて、玉座の間を出た。
急に私が飛び出してきて、先程の門番さんが体を震わせて驚きを見せていたが、その隙に潜り抜けて廊下に出る。
行く宛なんてない。どこに逃げよう。
そんな事考える間もないんだけども、走りながらもとある人物の顔がチラッと頭に過ぎる。
けど、世の中そんなに甘くない。
「…羅沙?」
行く手を阻む者は、大なり小なり。
…だが、こんなところで『大』の方がいきなり目の前に現れるとは思わず。
(…ああっ!嘘っ!)
逃げる私と正面から鉢合わせるかのように、曲がり角から姿を見せる。
その足を止めてしまい、後退りしてしまった。
まさか、こんなところで。
会いたくなかった…。
「…竜王様っ」