婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!

27.愛すべき柚子の香り

♦︎♦︎♦︎







「…あの伝説の悪女、黒闇天女を燃やした?あの『闇』神力の炎が?なんつー…」



俺の話を聞いた豹牙は、もう苦笑いするしかないらしい。



「…しかし、羅沙があの鬼子母神の娘、黒闇天女と吉祥天の妹とわね…」



ぶつくさ言いながら、そこらをぐるぐると歩き回る豹牙を横目で見る。

羅沙が目を覚まさず足止めをくっているようなもんだから、暇なんだろう。

犬の姿をした白虎も、豹牙の足元に絡むように一緒にぐるぐる歩いていた。



やれやれ…と思っていると、フワッと爽やかな香りが鼻を掠める。



これは…柑橘系特有の鼻に抜けるスッキリとした、柚子の香り。

羅沙がいつも好んでつけている香油の香りだ。



(………)



腕の中の羅沙の寝顔を見つめながら、顔にかかった髪を掻き上げてやる。

…あぁっ。寝顔が可愛すぎてニヤけそ…すみません。



すると、その柚子の香りがまた鼻を掠めた。



羅沙を連想させるその香りに包まれると、胸の中に張り詰めていたものが少しずつ解けていくような気がする。

そして、幸福感が湧いて。

君を、想う。
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