婚約解消してきちゃいました?ヘタレ令嬢様のチートキャンプ!

何気なくそこら辺に置いてあった柚子の匂いを嗅いで『いいにおい』と喋ったらしい。

その上、柚子の果汁で作った氷菓子、シャーベットを『おいしい』と言ったそうだ。



そこからはもう祭りだ。



『あなたぁぁっ!羅沙が…羅沙が、柚子の氷菓子を美味しいって、美味しいって食べたわぁぁっ!』

『何だと!羅沙は柚子が好きなのか?!…よし!柚子を沢山植えてやる!』



そうして、王領境に大量の柚子畑が出来上がってしまった。

そして、収穫された柚子で料理はもちろんのこと、香油、練り香水、果実水、調味料などなど。軽くブランドラインが出来上がってしまう。

この親バカぶりには、長兄の夜迦も呆れるほどだった。



それぐらい、羅沙といえば柚子、というイメージが定着している。

俺にとっては、愛おしい香り。



…あぁ、そういえば。

俺が羅沙に対して、特別な想いを自覚した時も、この柚子の香りが傍にあった。

思い出すのは、あの日のこと。

ちょっと可愛いなと思っていた友達の妹が、癒しをくれる、たった一人の大切な子に変わるのを自覚した瞬間だった。
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