最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
「今夜はずっと一緒にいて。私の手を握って、ひと晩中お話をして」
「わかった。ナタリアのお父様とお母様にそうさせてもらえるよう、お願いするよ。他には?」
「帰る前に、礼拝堂でキスをして! 結婚式みたいに!」
「それは……さすがにきみのお父様がお許しにならないよ」
「おでこでもいいから!」
「わかった。一応お願いしてみるよ。他には?」
どんなわがままでもローベルトが叶えようとしてくれるものだから、ナタリアはだんだん楽しくなってくる。
さっきまでベソをかいていた顔はすっかり明るさを取り戻し、頬を薔薇色に染めて瞳をキラキラと輝かせている。
「あとはね、あとは――贈り物が欲しい! 綺麗で、この世にひとつしかなくて、ローベルトの気持ちがうんと籠ってるもの!」
最後にとんでもないわがままを言ったもんだと、ローベルトの陰でイヴァンが密かに眉を顰める。
『綺麗』だけならば宝石でも贈ればよいが、この世にひとつしかなくて気持ちが籠ってるとなると、首を傾げざるを得ない。まさか手作りの工芸品でも贈れというのか。明日には帰路に就くのだからろくな時間もないというのに。