最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
 
「私は知っています、誰もが私を皇后にふさわしくないと非難していることを! イヴァン様だって雪姫を娶るべきではなかったと後悔されているのでしょう!? だから……私から逃げて遠い地で他の女性を愛してきたのでしょう!?」

噂を耳にした日から息の根が止まりそうなほど悲しくてつらかった思いが、悲鳴のように口から零れた。

イヴァンがいつか自分に背を向ける日が来るかもしれないと覚悟していたのに、いざ彼が他の女性に安寧を求めたのだと知ったときは想像以上に強烈な衝撃を受けた。。

愛おしくてたまらない彼の大きな手が他の女性の肌を撫で、髪を梳いたのだと思うと、目の前が真っ暗になる。嫉妬で全身の血が沸騰しそうになるのに、きっと自分では与えられない安らぎをその女性は持っているのだと思うと、底のない穴に落ちていくような無力感に襲われた。

ナタリアは醜く汚い感情が己にあることを初めて知った。今までイヴァンを気遣いながらも、彼の心を独占していることに慢心していた事実を突きつけられた気がする。

己の心の醜さ、イヴァンを繋ぎ留められない無力さ、そして愛を誓った彼の裏切り。ジーナの噂を聞いてからそれらと向き合続けたナタリアの精神は満身創痍で、よりによって神に祝福されるべき降誕祭の最中にまたも病に囚われたことが、彼女の忍耐を決壊させてしまった。

「憎いです……私を裏切ったあなたも、私にないものを持っている相手の女性も。けれど殺したいほど憎いのは、奇病に囚われているこの私です……。私なんて、生まれてこなければよかった……」
 
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