同期が今日から旦那様!?〜そこに愛は必要ですか?〜
裏切りと優しい嘘
私の記憶が正しければ、私は2週間前に彼氏である榎木健斗(えのきけんと)にプロポーズされたはず…。

なのに、どうして今私は、健斗と見知らぬ私よりもかなり若い女の子とテーブルを挟んでいるんだろう…。
しかも、健斗の隣は私ではなく彼女で。

さっき、呼び出されたこのカフェで頼んだミルクティーは、すっかり冷めてしまった。

誰も口を開かないから、ずっと嫌な静けさがここの席にだけ広がっていて、正直、居心地は最悪だ。


それでも、私からは口は開かない。

この状況を見て、嫌な予感しかしない。
絶対、悪い話だ。
聞きたくない。
帰りたい。
俯いてモジモジしている知らない女の子は、さっきからずっと健斗の服の袖口を掴んで離さない。
チラッと彼女の方を見ては、私を見る健斗の視線を私は無視している。
視線が合ったら口を開くつもり。
優柔不断の健斗らしい。
話を自分から言い出さないなんて。
だったら意地でも私からは視線を合わしたくない。
店の中に流れる有線の聞き覚えのある曲が去年の夏に流行った曲で、その曲がかかる車の中で初めて健斗とキスした事とか思い出したりして、胸がギュッと苦しくなった。
あの時は、横に座っていたのは私だったのに・・・。
プロポーズされたはずなのに、どうして私は今こんな気持ちになっているんだろう・・・。
顔をあげると、女の子と視線が重なる。
そらしたいけど、女の意地なのかプライドなのか気持ちとは反対に彼女を睨むように見てしまう。
「あ・・・あのッ!」
私の視線を真正面から受け止めた彼女は、思い切ったように声を発した。
健斗ではなく、彼女の方が。
「・・・何?」
務めて冷静に・・・と自分に言い聞かせて返事をする。
ここに呼び出されて、二人が並んでいる席に私が座らされた時点で予測は出来た。
「私・・・健斗君と結婚したいんです。だから・・・別れてくださいっ」
・・・・・直球よね、本当。

別れてくださいって言われて、はいそうですか、と私が返事をするわけがないと思わないのだろうか。
逆に面と向かって私に言ってくる彼女はすごいと思ってしまった。
だって、隣で健斗はオロオロしたまま、結局私に何も言わないんだから。
「私、二週間前に健斗にプロポーズされたんだけど」
瞬間に健斗がパッと私を見る。
何よ。事実じゃない。
「私、妊娠してるんです・・・今、四か月なんです」
彼女の告白に私は冷めきったミルクティを飲もうと伸ばしていた手を止めた。
は?妊娠?四か月?
視線を健斗に向ければ、ゆるい笑顔を彼女に向けて私の方を全く見ない。
・・・・・そういう事。
私と付き合っている時点で彼女とも関係があったという事なわけだ。
で、妊娠した、と・・・・・。

本気で殴りたい!!!!!

ここがカフェじゃなかった、握りしめたこの拳をあのにやけている顔面にめり込ませてやる所だわ!!!

どの面下げてプロポーズしてきてるのよ!!

私は28歳なのよ!

二股男になんか構ってられないんだから!!







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