同期が今日から旦那様!?〜そこに愛は必要ですか?〜
最悪な金曜日の泣き明かした結果の、鏡の中のブサイク極まりない顔をみながら、出るのは涙か溜め息しかない。

気持ちはだいぶ落ち着いた。
冷静に鏡の中の28歳の私を私が見つめる。

おばあちゃんにとりあえず、電話しないといけないな。
昨日、結局、かけられなかったし。
赤く腫れた目でスマホの画面を見る。

何て言おう…。

電話は何回も鳴らないうちに繋がる。

「おばあちゃん?乃亜だけど、おはよう。昨日は電話出れなくてごめんね」
申し訳ない気持ちでスマホを握りながら、頭を下げる。
「おはよう。おばあちゃんこそごめんね。仕事中だったんでしょ?」
「あ、うん…」
「婚約者の人と近いうちにこっちに来るって言ってたから、言っておかなくちゃと思って電話したのよ」
「あ…そう、だったね、うん」
返事がしどろもどろになってしまうし、おばあちゃんに申し訳ない気持ちで、言葉が詰まってしまう。確かに、電話した時に言った。近いうちに帰るからって。
「おばあちゃん、ちょっと入院することになったから。」
「えっ!どこが悪いの!?私、直ぐに帰るから!」
胸がザワザワする。
「大丈夫よ、入院って言ってもそんなに長くじゃないし。心臓が悪くなって来てるから、その手術をするだけよ。心配しないで大丈夫。乃亜の花嫁姿を見たいし、ひ孫も見たいし、健康じゃなくちゃね」
「おばあちゃん…」
前から心臓の具合があまり良くなかったけど、手術する程だなんて思ってなかった・・・。
「だから、婚約者の方には申し訳ないけど、会うのしばらくは無理かもしれないのよ、ごめんなさいね」
申し訳なさそうな声が受話器の向こう側から聞こえる。
「あ、ううん!全然気にしないで。大丈夫だから」
ごめん、おばあちゃんと心の中で思いながら、どこか今、言わなくていい事にホッとしている私がいた。
「手術の日にちが決まったら必ず連絡してね、絶対だよ」
そう念を押して、電話を切る。
おばあちゃんに心配をかけたくないと思うけれど、このまま言わない訳にもいかない。
かと言って、いつまでも黙っていられる事でもない。
はぁ・・・考えたくないな。
そんな私の気持ちとは裏腹に、土曜日の天気は晴天。
雲一つない空が広がっているのが腹立たしい。
いつもなら、健斗のマンションに泊まったりデートしたりしていた週末が、丸々、何もしない週末になってしまった。
一人の時には何気なく過ごしていた週末も、誰かがいることが当たり前になってしまうと無性に寂しく感じてしまうのは、心が弱っているせいなのか。
ぼーっとソファーに座ってただ、時間が過ぎていくのを待つだけ。
何もするような気力も湧かない。
すっぴんでダボダボの部屋着で眼鏡姿。
ご飯も食べる気しない。
私ってこんなに弱かったっけ・・・?
そんな自分にちょっと笑えて、乾いた声が漏れる。
あぁ・・・28歳で二股とか笑えない。



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