番外編 冷徹皇太子の愛され妃
そんなわけで、中には、後日、行儀見習いとして皇太子妃様のそばに仕えたい、と志願するものもいたという。

さて、それでは男性陣はどうだったかというと。

貴族の男性たちは女性ほど嫉妬深くはないので、一目見た途端、フィラーナが皇太子妃に相応しいと早々に認める者は多かった。

「なんと、エヴェレット侯爵家にはあんなに美しい令嬢が隠されていたのか」
「ああ、ひと先早く、自分が出会っていれば……!!」

と、驚き、嘆く令息もいたが、もはや後の祭りである。ただの人妻どころか、この国の将来の最高権威である皇太子の奥方なのだ。手を出そうものなら、ただちに投獄、打ち首である。

だが、世の中、どこにでも不届き者はいる。
とある伯爵家の息子が夜会でフィラーナに一目惚れし、バルフォア公爵夫人をはじめ、その他数人のご夫人方を招いた皇太子妃のお茶会に、図々しくも参加しようと割り込んできた。

その令息は、見た目は秀麗で頭も良く、口も達者で表面上は人気があったが、残念なことに女癖が悪かった。もちろん、その無礼な態度に公爵夫人はあからさまに嫌な顔をしたが、どういう訳かフィラーナが同席を許したので何も言えなくなった。

お茶会が進む中、フィラーナから彼に話しかけることはなく、あまり顔を見られないように彼女は扇を広げて目元だけを出していた。にも関わらず、その令息は不躾に、フィラーナの顔をじろじろと眺めている。この女神のように美しい妃にどのようにお近づきになろうかと、思案しているようにも見える。

やがてお開きになる直前、意を決した彼が、フィラーナに向かって声を発した。

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