20年越しのラブレター
 俺は、ドレスを持った紬を助手席に乗せ、目の前のうちの店に連れて行く。
外商部の応接室に通して、予め手配しておいた靴やバッグから、紬の赤いドレスに似合う物を選び、ヘアメイクを施させる。

 シンプルな紬のまとめ髪が解かれ、見る間に華やかに美しくなっていく。
艶やかなストレートの黒髪が緩やかに巻かれ、ベージュの口紅の代わりにドレスと同じ華やかな赤い口紅が引かれる。

 俺の贔屓目だけじゃない、どこから見ても上品で美しい紬が、そこにはいた。

「うん。すごくお綺麗ですよ。
 専務、いかがですか?」

美容師が振り返って俺に尋ねる。

「ああ、すごく綺麗だ。
 君に頼んで良かった。ありがとう」

俺は、美容師に礼を言って、紬に声を掛ける。

「紬、こっちにおいで。
 鏡を見たいだろ」

俺が手招きすると、紬は素直に姿見の前に立った。
紬は、自らの姿に驚いて固まっているようだった。

「な、綺麗だろ?」

 俺は、紬の後ろから手を伸ばして、ドレスに負けない光を放つネックレスを付けてやる。
紬の首元に手が触れた瞬間、紬の肩がピクリと震えた。

くくっ
かわいい…

その反応に味をしめた俺は、そのまま、今度はイヤリングを付けてやる。

今度は敢えて、さりげなく耳に触れてみる。
紬はさっきよりも派手に首を竦めた。

「くくっ
 紬はここが弱いんだな。
 覚えておこう」

どうしよう。
めっちゃ、かわいい。

「いいです。自分でつけます」

紬は恥ずかしそうにそう言うけれど…

「いや、これは俺の楽しみだから、紬には
 やらせてやらない」

だって紬、かわいすぎだろ。
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