吸血鬼と夢見る猫
他愛もない話をしているうちに、馬車は動きを止めた。

空は明るくなっており、眩しい日差しが差す。

「どうやら着いたみたいだ」

レイさんはキリッと紳士的なキャラに戻る。二重人格か何かなのかな。

「ここだよ」

「…っ、大きい」

そこには広い庭に、大きくそびえ立つ綺麗なお屋敷。

「さあ、ついておいで」

「は、はい」

馬車の中のレイさんとは全く違い、少し緊張感が漂う。
歩き出したレイさんに一歩後ろについて行く。

「日光が出てますけど、吸血鬼のレイさん大丈夫なんですか?」

そういえばと思った。人間が話していたのを聞いて、少し心配になって聞いてみる。

「大丈夫だよ。所詮人間の戯言に過ぎないさ」

「そうなんですね」

キィーッ

大きな玄関口を開けると、そこは、

『ようこそ、遊戯(アソビ)の館へ…』

5人の男女が礼儀正しく立って迎える。その人たちは、とても普通とは言えない異様な雰囲気を醸し出していた。

「なんだぁ、ジルドさんか。…ん?その薄汚い猫はなに?」

5人のうち1人が私を怪しそうにジトーっと見ながら言う。その人の耳はピンっととんがっていて、童顔とは裏腹に、筋肉質の男性だ。

「ま〜た拾ってきたの〜?さっすが優男くんだねぇ♪」

次は包帯で顔を巻いた男性。陽気にレイさんの肩をトントンと突く。彼は右目を覗かせ、私をギョロっと見るなり、目を細ませた。

「あんまり脅かさないでね、優しくしてやってくれ」

レイさんが私を抱き寄せる。何気に優しいところもあるのか…。

「よろしくね、猫ちゃん」

包帯の人がニッと目を細めせる。すると、レイさんが耳に口を近づけ、

「…こいつには気をつけた方がいい」

と耳打ちした。
気をつけた方がいい?そんなに悪そうな人とは思えないけど。

「あ、あの…ここってそもそも何なんですか?」

そういえば聞いていなかったのを思い出し、レイさんに声をかける。

「ここは、ヒトの疲れを癒すための憩いの場さ」

「憩いの場?」

「そう。人間の接待をして疲れを癒すのが僕らの仕事だよ」

レイさんが私の手を取りながら説明する。

「可愛らしい君のような女の子は、この中でも飛びっきり人気になりそうだ…」

チュッ

「!?」

妖艶な笑みを浮かべながら、手の甲にキスをする。そのような行為に慣れなくて、バッと手を引っ込めた。

「こんな感じに振る舞うのさ。ドキドキしたかい?」

キラン☆とウィンクをするレイさんの頬を殴りたい気分。
すると、今まで見ていた長い黒髪の女の人が駆け寄ってきた。

「ちょっとレイっ!!こんな変な猫にキスなんてしたら汚れちゃうわよ!」

「うるさいなぁ…ユキは変なんかじゃない、それに僕はすぐ汚れたりしない」

「っ…」

女の人は悔しそうに下唇を噛む。何故だろう…、よく分からない罪悪感に苛まれる。
ギロっと睨まれ、そそくさとどこかへ行ってしまった。

「すまないユキ。傷つけてしまったかい?」

「いえ、大丈夫です」

心配そうに私を見る。レイさんはいつからこんな過保護っぽくなったのだろう。

「とりあえず、ユキ」

「はい?」

「身寄りがないならここで働かないか?」

「っ…でも」

「君にはもう行くとこがない。ここはそんな君を養う事が出来る…」

「…」

「どうだい?」

「…じゃあ、働かせていただきます」

「これからよろしく頼むよ、ユキ!」

嬉しそうに微笑む彼の笑顔には、断れなくて

私はこの怪しそうなところで働くことになった。




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