Dangerous boy
「さあてと。勘違いさんは、どうしようかな。」

「あっ……」

私は尚太君の方を向いた。

「ごめんなさい。」

「まあ、俺も紛らわしい事、言ったからさ。」

尚太君は待合室の時のように、私の横に座った。


「俺、紗和子さんの事、本当に好きだった。」

その時、風がサァーッと吹いて行った。

「気づいたのは、高校生の時。紗和子さんを見ると、ドキドキしている自分がいて、いつの間にかずっと一緒にいたいと思うようになった。」

私はただその話を、黙って聞いていた。

「でも、紗和子さんにはオーナーがいたし。俺の事なんか、息子以上には思っていなかった。寂しくていろんな女と付き合ったよ。」

何て言ってあげたらいいか、分からない。

私は、呼吸をする事で精一杯だった。


「でも、心だけは違った。」


その言葉に、私は尚太君と見つめ合う。
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