Dangerous boy
「言っておくけど、心だけだから。」

「えっ?」

尚太君が、真っすぐ私を見つめてくれる。

「こうやって、ずっと相手するしてるのも、オレンジ絞ってあげるのも。」

もう尚太君と一緒にいると、ドキドキが止まらない。

「……今、口説いてる女も、心だけ。」

そして今度は、胸がドクンっと鳴る。

「分かってくれる?」

「うん……」


今、決めた。

私は、自分の胸の鼓動に、素直に従う。

そして、気づいた。


私は、尚太君が好きなんだって。


「そろそろ、私帰るね。」

「もう?」

私は二杯目のカシスオレンジを、早めに飲み干した。

「あっ、お会計……」

その時だった。

私の右手に、尚太君の右手が重なる。

「……ゆっくりしていけよ。」

その温かい手に騙されて、私はまだ居座る事にした。

「じゃあ、もう一杯だけ。」

「ああ。」


そしてまた、静かにカクテルを作る尚太君を、扇情的な目で、私は見るのだった。
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