完璧美女の欠けてるパーツ


職場のビルは50階建てで、僕が働く税理士事務所は20階のフロアにある。そこそこ儲けがある税理士事務所のつもりでも、上には上がいて、たまに見かける30階以上のビジネスマンのスーツの質は、素人の僕から見ても一流品だった。

5階から下は銀行、クリニック、フィットネスジム、飲食店&カフェが入り、先月日本初上陸のパンケーキ屋がテナントに入ったせいか、とても賑わっていた。
6階から僕の職場の20階までが、そこそこ儲かっている会社が入っていて、同じフロアにコンビニもあってとても便利だ。
僕の頭の上の21階からは、ランクアップされてグレードも上がる。
外資系の会社や法律事務所、IT関係やら大手のコンサルティング社などなど。
40階以上はホテルになっているので、21階から39階までが婚活女子には夢のフロアと呼ばれていた。

「いつの日か39階に引っ越ししたい!」と同僚は言うけれど、今年73歳になる事務所のボスであるうちの先生は「僕は高所恐怖症だから20階でギリギリだから」宣言をして同僚の戦闘モードの火を消してくれる。「そこじゃなくて!」と同僚に突っ込まれるけど、先生は素知らぬ顔でほうじ茶をすする毎日だ。僕はそんな先生が好きで職場も好きだった。

仕事は忙しいけど、2年前から恋人らしき女性はいないので、もう32歳だけどマイペースに独り身を楽しんでいる。

合コンも苦手なので誘われても断り、趣味の映画館巡りとか読書とか、たまに先生と将棋会館にお邪魔して将棋を指してリフレッシュしてるせいか、仕事が忙しいのは苦にならなかった。

でも最近
一緒に映画を観たり、食事に行ったり、くだらない話をする女性が傍にいたら楽しいかなとか、思うようにはなってきた。たぶんここ数年、友達が結婚ラッシュだったせいだろう。
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