完璧美女の欠けてるパーツ

こんな大きなビルなのに、同僚たちの女子情報はとても早い。
3階のカフェの彩香ちゃん。
4階の歯科助手のさくらちゃん。
16階のミスコン佐々木さん。
25階のプリンセス美咲ちゃん。
そして28階の高嶺の梨乃さん。

高嶺の梨乃さんと呼ばれる森田梨乃さんとは、朝の出勤が同じ時間帯で、流れる人混みに紛れても、彼女は優雅で気高く本当に綺麗だった。
柔らかそうな長い髪が肩の下まで艶やかに揺れていて、背筋を伸ばして歩く姿は見ているだけで美しい。目も鼻も口も全てのパーツが形がよくバランスが良い。柔らかな唇が魅力的でスタイルも抜群でモデルのようだった。

運良くすれ違っても、僕はその美しさに見惚れるだけで、当然だけど何も会話もなく縁もない。世界的な外資系の化粧品会社で広報をしていると人の噂で聞いていた。
綺麗な女性は華やかで眩しい肩書を持っている。
雲の上の人だった。
本当に高嶺の梨乃さんだった。



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