完璧美女の欠けてるパーツ

ある日のこと

絶対にありえない
本当にありえない
とんでもない事件が起きてしまった。

先生から買い物を頼まれて、同じフロアのコンビニに向かっていた。
買い物を頼まれたのは派遣社員の女の子だけど、彼女はみんなのアシスタント的な仕事をしていて、めちゃくちゃ忙しいので、彼女から無言の圧力を目線で感じた僕は、先生のガムを買いにコンビニに行くはめになってしまった。派遣社員の女の子は年下だけど強くて迫力があって怖くて、僕はよく使われてしまう。
こんな調子で彼女が欲しいなんて、どうかしてるなと情けなくなり笑ってしまう。

『鈴木先生は顔はいいから、もっと堂々と男らしくすればモテるのに!』
職場の女の子にいつも怒られる。
顔はどうでもいいとして、僕はどちらかといえば映画好きのオタクキャラだし、クールにも俺様にもなれないし、一応税理士の資格は持っていて収入はあるけれど、おつかいぐらいまぁいいか……って気持ちになるからダメなのかな。基本、人に頼まれたら断れないタイプだし。

先生のガムを買ってポケットに入れると、急に明日会う新規の顧客に聞く内容をひとつ思い出した。歩いているうちに忘れたら困るから、ちょっとスマホに書き込んでいたら、いつものように周りが見えなくなって夢中になって


ありえない

憧れの高嶺の梨乃さんにぶつかり

彼女のコーヒーをこぼしてしまった。

どうしてこんな出会いになるのか。
出会うならもう少しカッコよく
印象の良い出会いならよかったのに

僕はパニック半泣きで梨乃さんに頭を下げた。

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