完璧美女の欠けてるパーツ

高嶺の梨乃さん登場で大志の職場の人達は驚いた。

「すいません。鈴木大志さんはいらっしゃいますか?」
息を切らしてそう聞くと、近くの女子社員が梨乃の顔をまじまじと見て「うわっ、やっぱり綺麗」と言葉をもらす。

「あの、鈴木さんは?」
誰も応えてくれないので少し強めに女子社員に聞くと、彼女は「鈴木先生は……その……お休みしてます」と歯切れの悪い答を返してくれた。

「風邪ですか?」
梨乃が聞くと女子社員は近くの男性に助けを求めるような目をしたので、男性は軽くうなずいて梨乃の正面に来てくれた。梨乃より年下の若い男の子だった。

「鈴木先生は今年いっぱいお休みです」

「旅行ですか?」

「誰にも言わないでもらえますか?きっと僕は森田さんも関係あると思ってます」

「私が?」

「あいつに殴られて倒れてから『梨乃さんがあぶない』って、森田さんの名前を何度か言ってましたから」
思い出したように不満そうな顔をする。

「昨日、仕事で会員制ジムに行ったら、僕が電話をしている間、急に鈴木先生がロビーで立ち話をしていた男に殴りかかろうとして、逆に殴られて倒れました。うちの大先生に『弁護士に暴力はアカンわ』って呆れられてしまいました。向こうは正当防衛を持って来るけど、ボコボコにされたのは鈴木先生なんですよ。向こうの事務所のボスとうちの大先生が知り合いで、鈴木先生を今年いっぱい謹慎処分にするって話でケリをつけました」

梨乃は話を聞いてただ驚き、話をしてくれた彼に大志の住所を聞きスマホにその場で覚えさせた。
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