完璧美女の欠けてるパーツ
午後から5時まで長かった。
何度も時計を見ながら仕事をして、終業時間になるとすぐ梨乃は大志のマンションを目指してタクシーを拾った。
15分ほど走ってからタクシーを降りて、大志のマンションを見つけて部屋番号を捜す。そしてドアの前で大志のスマホの番号を鳴らす。3コールで大志の声がスマホから聞こえてきた。
「梨乃さん?」
「開けて下さい。今、私は大志さんの部屋のドアの前にいます」
「なんですって?」
「鍵を開けて下さい!」
「はいっ!」
扉の向こうからガタガタと音がして、鍵が外され大志の顔がドアから見えた。
「梨乃さん。どうしてここに?」
「その顔……ひどい」
「冷やしてるから大丈夫です。あ、ちらかってるけど、どうぞ」
梨乃を部屋に上げる大志の顔は目の上が切れていて、目の下は赤黒く色が変形していた。メガネでなんとかごまかしているって顔をしている。
「どうしてこんなことに……」
「まぁ色々とLINE見ましたか?」
「はい」
「そーゆー事です。コーヒーでいいですか?」
「大志さん。そこに座って下さい」
「……はい」
大志は梨乃とフロアに正座して見つめ合う。