甘味好き御曹司とお見合い結婚!?

 「そんな時に、母からお見合いの話が来て普段なら断るんだけれど、話を聞いたらここでデザートを作っているパティシエの子だって聞いて、今回は俺自身が会いたくてこの話を受けたんだ。どうだろう? 今度君の休みの日に俺と会ってくれないだろうか?」

 いくら経験値が無くっても、これがちょっとした顔合わせからのデートのお誘いだとは理解できる。
 しかし、こんなにかっこいい人に誘われたことなんてない私はもう脳内大混乱だった。

 「えっと、祖母が落ち着いたらで良ければ……」

 私は、詰まりつつもなんとか答えを返す。
 そんな私の返事に、彼はパッと輝くような笑顔を浮かべると私の顔を見て言った。

 「もちろん、おばあ様の容態が落ち着いてからでかまわない。ありがとう。これ、俺の連絡先。夏乃さんのも教えてもらっていいかな?」

 差し出された名刺には代表取締役社長の文字。株式会社イノベントの文字は最近人気のアプリで見る文字だ。
 
 「あの人気アプリが沢山あるイノベントの社長さん?!」

 私の驚きの声に、高峰さんは小首をかしげつつ頷いて言った。
 そのしぐさは大きな体に見合わないものなのに、なんだか可愛く思えてしまった。

 「あ、知ってくれてるんだ。 そう、俺はアプリ開発の会社をやってるんだ。実家の高峰電機は父と兄が経営していて問題ないから、俺は好きなことをさせてもらっているよ」

 なんと、もっと大きな会社の名前が出てきた。
 高峰電機は、家電量販店の中でも業界大手の企業だ。
 いつも品よく、綺麗な弥生さんを思い出して高峰電機の社長夫人だったのかと納得したのだった。
 お祖母ちゃんの知り合いの広さにも驚きつつ、私はハッとして一言返す。
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