甘味好き御曹司とお見合い結婚!?

 「あの、私はそんなご立派なお家とは合わないくらい平凡な一般家庭の子なんですけど……。大丈夫ですか?」

 そんな私の言葉に、今度は高峰さんが慌てた様子になる。

 「俺は次男だから、実家を継ぐわけではないし最近上昇してきたもののまだまだ駆け出しの会社をやってるだけだから、そこは気にしないでくれると助かる」

 「そうなんですか?」

 まだ、少し高峰さんの実家の大きさにはしり込みしそうになるけれどそんな私に彼は気づいたらしく、優しい雰囲気は変わらぬままに、言った。

 「実は、このお店に通うようになって夏乃さんがお菓子を作っていることに気づいてからずっと気になっていたんだ。 こんなに美味しいデザートをどんな子が作っているんだろうって」

 その言葉に、私はようやっと真っすぐに高峰さんを見ると、彼は嬉しそうに笑っていた。

 「たまに厨房にいる夏乃さんに気づいてからは、お店に来るたびに気になっていたけれど、夏乃さんはホールには出てこないからお話しする機会も無くって……。今回のお見合い話は俺にとって、最高の機会だったんだよ。だから、落ち着いたら二人で出かける機会を下さい。よろしくお願いします」

 どこまでも真っすぐで、優しい彼の雰囲気は私に少しの緊張を与えるけれど慣れていないはずの異性との会話が成立した時点でかなり珍しいことなのだと自覚していた。

 「はい、よろしくお願いします」

 きっとこの機会を逃すと私には早々出会いなんてない。
 お祖母ちゃんの希望のためにも、この出会いを大切にして前向きに向き合うことに決めた。
 私は、こうしてお見合い相手がまさかの常連さんに驚きつつも、次にも会う約束をして、この日は連絡先を交換して別れたのだった。

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