甘味好き御曹司とお見合い結婚!?

「結構忠実に再現されてるんだね! 面白かった」
「本当ですね! 楽しかったです」

そう話すと次は女の子に人気のマーメイドが主役のエリアに到着して、眺めつつ歩く。
ここはわりと小さな子向けで家族連れが多い。
お父さんとお母さんと手を繋ぐ女の子とすれ違うと、つい眺めてしまう。

「夏乃ちゃん?」

「ごめんなさい。 あんなふうに出かけるの少し憧れるなと思って……」

私の視線の先の家族をみて、高峰さんは穏やかな笑みを浮かべると繋いだ手をしっかりと握り私の手を引いて距離を近づけた。

「夏乃ちゃんが、そう思ってその相手に俺を選んでくれれば、数年後にはああして今度は家族で来られると思うよ」

その言葉にドキンと胸が大きく鼓動を打つ。

そうか、父と母とああして過ごした記憶はあるけれど、もうそれは取り戻せない。
優しい楽しい記憶として残っているから、つい眺めてしまうけれど自分の家族はもしかしたらこれから増やせるかもしれないんだ。

隣の高峰さんはそれは出来ると思っているようだし、私を優しく甘く見つめてくる事がだいぶ増えたと思う。
彼はかなり鈍感な私に、ストレートに想いを伝えてくれているのだ。
こんなに良い人で、私に積極的に来てくれる人なんてもう出会えないかもしれない。
お祖母ちゃんも言ってたように、この出会いはいい縁なのかもしれない。
楽しくテーマパークを回りしつつ、高峰さんの言葉を思い返しては私の胸に温かな期待が溢れてきていた。

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