煙草未満。―唇を塞ぎたくて―
「喋ってもいいよ?聞くの拒否するから」
うるさいなぁ、くそ教師め。
「聞く気ないってことでしょ?じゃあ聞かせればいいんだよね、無理やり」
「えっ」
珍しく上擦った声を出した彼に、
「トリック オア トリート!」
勢いよく突きつけた。
「……お菓子、ないよ」
両手を並べてつくった器に、ぽんと手を置かれる。
先生をもらえればそれが本望だから、この手は嬉しいんだけど。……内緒。
「職員室にあるの、知ってるんだけど。コーヒー飲む時に食べるでしょ」
「なんで知ってるんだよ」
頭をかいた先生の前髪が、抵抗することを面倒くさがるように、風に攫われた。