煙草未満。―唇を塞ぎたくて―
「だいたい、俺が職員室までお菓子を取りに行くと思うか」
「思わないけど」
「だろうな。賢いこどもだ」
のせられたまんまの手が、熱を帯びてきている。
体温が、じゅわっとまじわる。
……と、その途端に手が離れて。
携帯灰皿に、煙草が移動する。
「……じゃあ、イタズラだね」
少しふくれながら言うと、「そうだな」と低い声が若干笑った。
「イタズラで」
必要でなくなった器を下げようとすると、片手ががっしりと掴まれた。
「え?」
その手は彼の顔に寄せられていく。