浮気男のシンデレラ
土曜日。
誰も居ない。ピピとララを抱き
ながらのリラックスタイムを過ごし
ていたら
妹の陽菜が帰って来た。

昔ながらのナポリタンをトマト
多めでルーを作る。
隣で麺が茹で上がる頃、AM10:30
携帯の音楽が鳴る。

「陽和ちゃん、今日、お.や.す.み?」

「はい。」

「デートは?」

高校、大学とアルバイトしていた、
ラブベリーCafeからの電話だった。
いっも、ライ〇でSOSが飛んで
来るのにどうしたんだろう。


「デート?嫌味ですかー
彼氏が出来ないのではありません。
出会いが無いだけ、な.い.だ.け.
です。」


「^ω^ふふふ、はいはい。

デモ良かったぁ﹏お願い‼
手伝って、新入りちゃんが夜合コン
入れちゃったの‼

男女20名。

今店満席なのよう﹏。
仕込みの暇がないの、あ‼ 夜はね
父と旦那が、ホテルから駆け付けて
くれるんだけど

仕込に彩菜か、私が入ったら
厨房まわんないのよ。

夜も直ぐ満席になるし、お願い。」
一気に喋りまくる彩乃さんは宝〇の
男役が似合いそうな、スッキリとし
た、美人の29歳。妹の彩菜さんも
負けず劣らずの美人27歳。

旦那さんは某有名ホテルのコック
さん。
お父さんは同じホテルのコック長

陽和もビシバシビシバシ鍛えられた。
それはもうたちあがれ無い程
怒られた経験アリ。

強面の、コック長は睨みで物
を言う。


「ウググググ、コック長も・・・。」

「アハハハハハ、大丈夫よ。
陽和ちゃんの事は褒めてるし、
どうして飲食業に入らないのか?
って、言ってるくらいよ。

大丈夫、夜は接客に回って貰うし
パイ、とケーキ焼いて貰えば
助かるなぁ!

あと出来たらパンとスープとゼリー
とプリンかな?」

「結局、いっもと一緒じゃない
ですか、時間勿体ないから切り
ますね。
直ぐ出ますから。」

本当に話してる時間が勿体ない。
ブチッと電話を切り陽菜のパスタ
を用意する。
葡萄味の紅茶のパックをカップに
ポイッ

お湯くらい自分でヤレ。

浴室で髪を乾かしている陽菜に声を
かける。

「陽菜ひーな!カフェ行ってくる。
パパ、ママの夕食おねがーい。」

「ええー、やだー眠い。」

「鍋事、用意して冷蔵庫はいってる
コンロに乗せるだけだから。

後は鍋奉行に任せとけば良いからー
ご飯はタイマーだし

「皿とコップくらい自分でヤレ」

あー「なら、ハイハイ
行ってらー!」

9月半ば秋風が少し吹き出す頃。
半袖で、夜は少し冷えるかもと
後悔しながら、チャリを漕ぐ。

20分かかるカフェに到着、裏口に
回り中へ入る。
ロッカーへ向かうと陽和の制服が
用意してある。
クリーニングの、袋を
開けると真っ白いコック服と茶色い
エプロン、ロッカーは未だ、陽和の
使っていたままだ。

安全靴に足を通し、長い髪は
ネットに押し込み、エプロンを
締め 厨房へと向かう。

分厚いドアを開けると外の静けさ
が嘘のようだ。

洗浄機の回る音
シルバーをセットする音、
(ナイフ、スプーン、フォーク)

パンの焼けた合図のブザーの音

ブレットを形から外すコンコンコン
と言う音。

シナモンの香りとバニラエッセンス
ハンバーグの焼ける匂いに、
ステーキのやける匂い。


「あーホッとする。」


「陽和ちゃん、有難う。」
焼き場から彩乃さんが叫ぶと妹の
彩菜さんも手を上げて合図する。


陽和もポイポイと手を上げて
合図する。
エプロンを締め直し戦闘態勢。

8リットル入る寸胴鍋を4つ火を付
けて並べる。

卵スープ、コーンスープ、コンソメ
スープ、後はゼリー用のお湯。
お昼のピークに向けて準備する。

パイ生地、スポンジ、チーズケーキ
レアチーズケーキ
チョコケーキ、スフレケーキに
プリン。テキパキテキパキと作り上げ
る。

まだ陽和の存在を知らないバイト
ちゃん達は、新入りのバイト生
(高校生)
と思っていたらしい。

仕事の速さに目を丸くしていた。


「スゴ‼」
様子を見に来た彩乃さんは

「さすが・・・。」
と言って焼き場に帰っていった。

お昼のピークも過ぎた頃の三時
準備中の立て札をだす。

午前中のバイト生も午後からの
バイト生もパートも皆んな一緒に
昼食をとる。


皆んなクタクタになってダレて
いる。

焼き場からカットされた肉と珈琲
スープ、が運ばれる

サラダはサラダバーから個人個人で
取って食べる。
焼きたてパンも食べ放題。

陽和もフォークでドンと積まれた
肉を刺す。大根の入ったニンニクダレ
にダイブ、パカーンと口に入れた時

1人の女の子がたっていた。

「ん?どうしたぁー、
早く食べないと無くなるよ。」
と声をかけたら

「すみません、私のせいで、お仕事
お休みだったんでしょう。
申し訳ありません。」
と、頭を下げてきた。

真面目そうな女の子に昔の自分が
重なる。

「あ、アハハハハハ大丈夫、大丈夫
いっも、呼び出されてるから
いっもの事だし、気にしないでよ。」

「有難うございます。」

「まさかだけと、辞めるなんて考え
ないでよ。

他所の店より待遇いいし
バイトはシッカリ教えてくれるし
土日の賄いは肉だし。
良いと思うよ。」

女の子は頷くとニッコリ笑って
くれた。
一緒に食事をとり仲良くなった。

後輩も育てる事を忘れない
何時までもこのカフェはあり続けて
欲しい。

このカフェを卒業して行った、誰もが
帰って来れるように。








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