愛というもの~哀しみの中で~
大吾の言葉に驚いて涙が止まった。
振り返って大吾の顔を見るとバツの悪そうな顔をしていた。

「茉莉に言うと嫌われそうで言えなかったんだけどさ…うちの親父も兄貴も結構お堅くてさ、息苦しかったんだ。」

大吾が抱きしめる腕の力を強めたから、私はその腕を抱きしめるように抱えた。

「俺も当たり前のように大学行ってお堅い仕事に就くって思われてて、高校までは俺も他に選択肢はないと思ってたし、それなりに勉強して塾とかも通ってた。」

「そうなんだ、意外。大吾にお兄さんいたんだね。」

そういえば前に高校を卒業して家を出たってしか聞いたことなかったな。

「うん。カッコ良くて自慢の兄貴なんだ。大学卒業して銀行に就職しててさ、スーツ姿が特にかっこいいんだ。」

「へぇ、そうなんだ。大学卒業して就職って大人だね。」

「6コ上。今26?27かな?」

「大吾が20歳だもんね。」

「あ~いや、俺今21。」

「えっ?20歳って…えっ?誕生日っていつ?」

そうだ!出会ってもう半年は経つからその間に誕生日があってもおかしくなかった…

「あっと…夏。花火行っただろ?あの時その日がいいってごり押ししてた。あの日。」

「花火…言ってくれなきゃ。あの日も車出してくれたり、お金も全部出してもらった…」
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