愛というもの~哀しみの中で~
夕方に入院して、昌くんと由実ちゃんのお母さんも駆けつけて来てくれた。
私は家族じゃなかったから面会時間が終わると帰らないといけなくて久しぶりに恭吾と2人で家に帰った。

由実ちゃんのお母さんは由実ちゃんの実家に一緒に帰ろうと誘ってくれたけど、このままずっと甘えるわけにもいかないから断った。
久しぶりに静かな家は淋しかった。
暗い部屋の電気を付けると大吾の遺影とその横に遺骨が置いてある。

「ただいま。」

って言うけど返事は返って来ない。
大吾が死んでもうひと月が経とうとしていた。
恭吾とお風呂に入って、ベッドで寝かしつけていたら電話が鳴った。
昌くんからのメールで、21時過ぎに女の子が無事に産まれた報告だった。

それからは恭吾と2人の生活が始まった。
昌くんは顔を見に来てくれるけど赤ちゃんが産まれたばかりなのにうちにいるのもおかしいからいつも玄関で追い返した。

「今日は恭吾と遊ぼうと思ってきたんだけど。」

「うん、気持ちだけで。はやく由実ちゃんのところに行ってあげないと。私たちなら大丈夫だから。二人の生活にも慣れてきたのよ。あと半月もすれば仕事にも復帰するし、いつもありがとう。」

「はぁぁ、茉莉ちゃん…昌美にも会いに来てよ。初日にしかきてくれないって由実も淋しがってた。」

「わかった。ありがとう。じゃあ、気を付けてね。」

そういうとやや強引に玄関のドアを閉めた。
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