愛というもの~哀しみの中で~
リビングの電気をつけて、とりあえずおむつを替えた。
それから由実ちゃんが置いて行った鞄に入ってる昌美ちゃんのミルクを作ると抱っこして飲ませる。
普段はおっぱいしか飲まないのにちゃんとママがいないときはミルクを飲むなんてえらい。

「昌美ちゃんはえらいわねぇ。ママを困らせないようにちゃんとミルクも飲むもんね。」

私は久しぶりに自分の心が穏やかなことに気づいた。
自分でも何となく認めたくない感情が芽生え始めたことに気づいている。でもそれを受け入れるにはあまりにも耐えがたいことでその感情に気づかないふりをしている。

「昌美ちゃんは心が純粋だから死んだ人がみえるのかしら?ここに大吾はいる?」

子供は心が純粋だから死んだ人が見えるって聞いたことがあった。
もし大吾がいるのなら抱きしめてほしかった。

「残念だけど見えてたとしても昌美はまだおしゃべりできないから教えてはもらえないよ。」

いきなり後ろから声がして、私はびくっとした。
それを見て真さんは笑っていた。

「いきなり話かけるから…。」

私が少し睨むように真さんを見るとニコニコと笑いながら私の横に座った。
最近では真さんはみんなが言うように必ずわたしのすぐ横に座り、どこか体が触れている。
今も昌美ちゃんのミルクを飲ませているのをのぞき込みながら自然と私の肩を抱いている。
でもそうされることで安心感を得ている自分がいるのがわかる…。ここは大吾の場所なのに…。
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