愛というもの~哀しみの中で~
大吾の事故から100日が経った頃、大吾の実家にお坊さんを呼んでお経をあげてもらった。
親戚はもう呼ばずに義両親と真さんと、私、昌くんだけ集まった。
昌くんが来た時に由実ちゃんと由実ちゃんのお母さんも一緒に来てくれて大吾にお線香をあげてくれた。
私の家にはお線香は置いてなくて私は大吾にお線香をあげるという行為を受け入れきれてなかった。だけど…まだ100日しか経ってないのに、今では大吾のいない生活が普通になっていた。

お経をあげてもらっている間、恭吾は退屈になり、真さんと昌くんの膝の上を行ったり来たりしていた。
でもお坊さんが帰っていき、仏壇の前に私ひとり座って大吾の写真を眺めていると恭吾は私の所に来て私を抱きしめてくれた。

「ママ、パパはもう帰ってこない?」

たぶんずっと疑問に思ってて、でも私を気遣って聞けなかったことだったんだと思う。

「うん。もう帰ってこれないけどね、きっとお空の上で見てるよ。だから心配かけるとパパ泣き虫だからすぐ泣いてるかも。」

私は大吾がうろたえているところを思い出し、冗談っぽく言うつもりが目からは涙が溢れていた。

「ママが泣いたら、パパも泣くよ。きょうちゃん泣かない。」

「そうだよね。でも泣きたいときは泣いていいってまこちゃんいつも言ってるよ。」

恭吾が私にぎゅーっとしがみついて、肩に顔をうずめると泣いていた。
やっぱり恭吾だってパパが好きだもんね。帰ってきてほしいよね。
私は恭吾の背中を撫でながら一緒に泣いた。
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