愛というもの~哀しみの中で~
「違う、違うの。私大丈夫なの。」

私は必死で大吾の腕を掴んで首をふる。
大吾には聞こえてないのか目が合わない。

「ねぇ、ちゃんと聞いて。お願い。ごめんね、こんな私でごめん。我慢させたのもごめん。お願い…私から離れないで。」

次から次へと涙が流れる。面倒くさくてうっとうしい女になってるのもわかる。
でも大吾が帰ってしまうともう会えない気がしてセックスするよりもその方が怖かった。

「いや、こんなつもりじゃなかったんだけど…飲み過ぎだ。頭冷やすよ。今日は帰る。マジごめん…」

大吾は私の手を優しく払うと玄関へ歩き出した。
行かないで…
私はまた後ろから抱きついて引き止めた。

「お願い。ひとりにしないで。怖い…大吾がいなくなるのが怖い。」

私は子供のように泣いてすがった。
大吾は私の手を両手で掴んだ。やはり微かに震えていた。
私は引きはがされないように力いっぱい大吾を抱きしめた。

「うっ、わ、わかったから力緩めて。どこにも行かない。」
< 65 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop