天満つる明けの明星を君に②
天満の意を汲み取り、吉祥の口には自死しないように猿轡が噛ませられた。

鬼脚家秘伝の薬ということもあり、何を使って作られたのか速やかに聞き出さなければならなかったが、恐らく半分気がおかしくなっている吉祥からは何も聞き出せそうになかった。


「とにかく体内に入った薬を体外に出さなくては」


「天様、天様!」


ずっと悲鳴のような声で天満に話しかけている雛乃と天満の間に割って入った朔は、厳しい表情で爺の襟首を掴んで引きずり出すと、冷たい声色で命じた。


「吉祥の部屋へ行って何を作っていたか全てここに持って来てくれ。いいか、全てだ」


「は、はい!」


「お前が仕えている家の子息だが、天満が失明するようなことがあれば、家を潰す。一族を殲滅する。これは脅しじゃない」


小さく悲鳴を上げた爺から手を離した朔は、横たえさせた天満の傍で励ましの声をかけ続けた。

そして雛乃は朔の命を実行すべく、爺を置いて駆け出した。

吉祥の部屋は分かっているが、入ったことはない。

だが四の五の言っている間に天満の容態が悪くなるようなことがあれば――生きていけない。


「きっと解毒薬があるはず…!」


吉祥の部屋に駆け込んだ雛乃は、机の上に散乱していた数々の薬を目にして佇んだ。

この中にきっと解毒薬があるはずだが、どれか分からないため全て持って行くしかない。


「これに包んで……え、これ…」


数々の薬の中に、見たことのある薬を見つけた。

吉祥が何のために作ったのか分からなかったが、天満に使われるわけにはいかないため、それを懐に入れた後、風呂敷に全ての薬を詰め込んで胸に抱きしめると、長い廊下を駆けた。


「天様…!ああ絶対に助かりますように…!」


祈ることしかできない。

何を信仰するでもなかったが、何かに祈った。
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