天満つる明けの明星を君に②
天満の右目に入った秘薬とは劇薬であり、目に焼け付くような痛みを感じながらも、向かってきた吉祥に向けて揚羽を構えた。
――吉祥の家の心配はしなくていいと言われたものの、表向きは何の弊害がないとしても、多少のわだかまりは生じるかもしれない。
瞬時に思考した天満は、吉祥の命を奪うことをやめて、低い姿勢から刀を振り上げて吉祥の右耳を削ぎ落した。
「う、ぎゃっ!」
「そこまでにしてもらいましょう」
割って入った輝夜は、痛みにのた打ち回る吉祥を羽交い絞めにして耳元で囁いた。
「それ以上暴れるならば、お前の命は私が奪う」
「ひ…っ」
「よもや刀に毒を塗ろうとは…卑怯な男よ」
片膝をついた天満に手を貸して立たせてやった銀は、怒りに耳を倒して牙を剥いた。
百鬼たちから轟々と非難の声が上がり、殺気がみるみる膨れ上がると、その場は異様な雰囲気に包まれ、頭上の空に暗雲が立ち込め始めた。
それは朔の怒りと呼応しており、大切な弟を傷つけられて目の色が変わった朔が吉祥に向かって一歩踏み出すと、雪男がその肩に手を置いて首を振った。
「やめるんだ主さま。もう決着はついてる」
「天満が傷つけられたんだぞ。正々堂々とした勝負ならば、俺も口を挟まない。天満、大丈夫か」
「大丈夫…ですけど、目が…」
「天様!」
銀に肩を抱かれて縁側まで移動した天満は、押さえていた右目に火が付いたような痛みを感じていて、歯を食いしばった。
頬や首にも所々吉祥が作った劇薬が付着していて、肌の色が青黒く変色し始めていた。
「お祖父様を!」
「居るよ」
異変を感じて平安町から駆けつけていた晴明は、天満が抑えている右手を外して顔を覗き込んで眉を潜めた。
「これは酷い…!早く処置しないと失明する。誰か私の薬箱を!」
普段穏やかな晴明の声色に焦りが滲み、一同は不安を覚えた。
もし天満が失明したら――ただでは済まさない。
朔の発する殺気が、それを如実に物語っていた。
――吉祥の家の心配はしなくていいと言われたものの、表向きは何の弊害がないとしても、多少のわだかまりは生じるかもしれない。
瞬時に思考した天満は、吉祥の命を奪うことをやめて、低い姿勢から刀を振り上げて吉祥の右耳を削ぎ落した。
「う、ぎゃっ!」
「そこまでにしてもらいましょう」
割って入った輝夜は、痛みにのた打ち回る吉祥を羽交い絞めにして耳元で囁いた。
「それ以上暴れるならば、お前の命は私が奪う」
「ひ…っ」
「よもや刀に毒を塗ろうとは…卑怯な男よ」
片膝をついた天満に手を貸して立たせてやった銀は、怒りに耳を倒して牙を剥いた。
百鬼たちから轟々と非難の声が上がり、殺気がみるみる膨れ上がると、その場は異様な雰囲気に包まれ、頭上の空に暗雲が立ち込め始めた。
それは朔の怒りと呼応しており、大切な弟を傷つけられて目の色が変わった朔が吉祥に向かって一歩踏み出すと、雪男がその肩に手を置いて首を振った。
「やめるんだ主さま。もう決着はついてる」
「天満が傷つけられたんだぞ。正々堂々とした勝負ならば、俺も口を挟まない。天満、大丈夫か」
「大丈夫…ですけど、目が…」
「天様!」
銀に肩を抱かれて縁側まで移動した天満は、押さえていた右目に火が付いたような痛みを感じていて、歯を食いしばった。
頬や首にも所々吉祥が作った劇薬が付着していて、肌の色が青黒く変色し始めていた。
「お祖父様を!」
「居るよ」
異変を感じて平安町から駆けつけていた晴明は、天満が抑えている右手を外して顔を覗き込んで眉を潜めた。
「これは酷い…!早く処置しないと失明する。誰か私の薬箱を!」
普段穏やかな晴明の声色に焦りが滲み、一同は不安を覚えた。
もし天満が失明したら――ただでは済まさない。
朔の発する殺気が、それを如実に物語っていた。