天満つる明けの明星を君に②
「雛ちゃん…雛ちゃんはどこに…」

上の空のように、居間に横たえさせられた天満は雛乃の名を呼んでいた。

いくら晴明といえども毒の種類が分からなくては対処ができない。

だが肝心の吉祥は、自死防止のため猿轡を噛ませられて話せず、また話すつもりもないようだった。

ただただ目をぎらつかせて、天満を睨んでいた。


「戻りました!晴明様!」


風呂敷にありったけの薬を詰め込んで戻って来た雛乃から風呂敷を受け取った晴明は、それを開いて素早く確認をした。

ひとつだけ包み紙に入っている薬が少ないものがあり、それをくんと嗅いだ晴明は、それを吉祥に見せて顔色を窺うと、眉間に皺を寄せた。


「いくら毒に慣れているとはいえ、これは劇薬だ。そなた、全てを投げ打って鬼頭の者を殺めるつもりだったのか?朔の気ひとつでお家の断絶も有り得るのだぞ」


唸り声を上げる吉祥からはまともな回答を得られることができず、晴明は持ち運びのできる大きさのすり鉢を取り出して風呂敷の中の薬をいくつか取り出して入れた。


「私は本の虫でね、薬学においては鬼脚の者よりも知識に優れている。天満、安心しなさい、すぐ解毒薬を作ってあげるからね」


「お祖父様、お願いします」


ひっ迫した声を上げる朔の頭を優しく撫でた晴明は、腕まくりをして解毒薬の調合を始めた。

戻って来た雛乃は伸ばされた天満の手を両手で握り、痛みに顔を歪めている天満をずっと励ましていた。


「天様、すぐ治りますからね…!」


「ああ…僕はまた油断してしまったのか…」


――‟また”?


天満の言葉が引っかかったけれど、今はそれどころではなく、天満の手を握り続けた。
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