天満つる明けの明星を君に②
天満に噛ませた麻酔効果のある木片が効果を発揮し、それまで痛みに喘いでいた息遣いは安定して身体から力が抜けた。

朔たちで天満を担いで自室に運び込んだ時もほとんど意識はなく、雛乃は終始おろおろしながら彼らの後をついて行くことだけしかできず、顔色は真っ白になっていた。


「私の治療は無事終わったから安心しなさい。しかし数日は痛みが残ったり身体を動かすことが不自由だろう。そなたに介護を任せて良いかな?」


「は、はい、お任せください!」


「良かった。私も毎日通って様子を見に来る故、どんな様子だったか教えてもらえると助かる」


晴明の切れ長だが優しい眼差しで頼まれた雛乃は、力強く頷いて寝かされた天満の傍に腰を下ろした。


「必要なものは雪男に言づけておこう。さあ皆、天満を休ませてあげなさい」


それまで心配そうに天満を見ていた朔たちは、天満と雛乃を残して引き上げた。

…あんな太い針で目を刺されるなんて、想像するだけで痛いのに。

今も身体は弛緩しきっていて無防備で、いつ目を覚ますか分からない。


「天様…私がお傍に居ますからね」


――それからてこでも動かないといった風に頑なに天満の傍に居た雛乃の元に、晴明から頼まれたものを持って来た雪男がやって来た。

未だ眠り続ける天満の顔を覗き込むと、頓着なく雛乃の隣に座って一瞬緊張させたものの、にかっと笑って安心させた。


「こいつが忍耐強いからあんな治療に耐えられたんだろうな。吉祥は結界を張った部屋にぶち込んであるからここには来れないし、安心して天満の傍に居てくれ」


「はい」


雪男が真っ青な美しい目を細めて笑んだ。

それがさも懐かしそうにしているように見えてまた違和感が残ったけれど、今は何も考えず、天満を看病した。
< 136 / 213 >

この作品をシェア

pagetop