天満つる明けの明星を君に②
雛乃を部屋に案内した後、真っ先に朔の元へ戻った。
暁には部屋に居るようにと言いつけてあり、朔の隣に輝夜が座しているのを見てどきっとした天満は、ようようとふたりの前に座った。
「輝兄…何か…何か見えたんですか?」
――輝夜はこの世とその理を創造している恐るべき存在の元で幼い頃から人々を救済する役目を担っており、未来を見通す力を持っていた。
紆余曲折ありようやく朔の元で過ごしたいと言う願いが叶った後はその力を自ら封じて過ごしているものの、時折唐突に見える未来もあるのだと言う。
だからその輝夜が微笑んでいるものの自分を待ち構えていたように見えて、元々気が動転しているのにさらに動転して顔面蒼白になっていた。
「見えていたとしても言えませんが、今日と言うこの日、お前が待ち望んでいた日ではないのですか?」
「…あの子は雛ちゃんです。それは間違いないんです。あの顔、声…上目遣いの表情…仕草…同じなのに…同じなのに、僕はどうして…」
「雛菊が前世の記憶を持って生まれ直すと思い込んでいたのでは?確かに銀の妻の若葉は前世の記憶を持っていましたが、それは稀なことなのですよ」
白狐の九尾である銀は幽玄橋で人の赤子を拾い育て、恋が芽生えて夫婦になったものの、若葉は病に罹り、若いうちに死んでしまった。
だが長い時を経て今度は白狐として――妖として転生して前世の記憶を保持しつつ、今も銀と共に在る。
…憧れていたのかもしれない。
そんな美しい未来を。
「そう…ですね。僕は楽しいことしか考えてなかった。雛ちゃんが僕を覚えてくれていたり、僕がすぐ雛ちゃんを見つけられるそんな甘い未来を…」
唇を噛み締めて俯いた弟の頭を、兄ふたりは優しく撫でた。
輝夜の目には、天満と雛乃の行く末が見えていた。
だけれども、それに干渉してはならない。
ただただ見守り、おかしな道筋を辿らないようにそっと導いてやることしかできない。
「僕は…」
どうしたいのだろう?
考えても、何も浮かばなかった。
暁には部屋に居るようにと言いつけてあり、朔の隣に輝夜が座しているのを見てどきっとした天満は、ようようとふたりの前に座った。
「輝兄…何か…何か見えたんですか?」
――輝夜はこの世とその理を創造している恐るべき存在の元で幼い頃から人々を救済する役目を担っており、未来を見通す力を持っていた。
紆余曲折ありようやく朔の元で過ごしたいと言う願いが叶った後はその力を自ら封じて過ごしているものの、時折唐突に見える未来もあるのだと言う。
だからその輝夜が微笑んでいるものの自分を待ち構えていたように見えて、元々気が動転しているのにさらに動転して顔面蒼白になっていた。
「見えていたとしても言えませんが、今日と言うこの日、お前が待ち望んでいた日ではないのですか?」
「…あの子は雛ちゃんです。それは間違いないんです。あの顔、声…上目遣いの表情…仕草…同じなのに…同じなのに、僕はどうして…」
「雛菊が前世の記憶を持って生まれ直すと思い込んでいたのでは?確かに銀の妻の若葉は前世の記憶を持っていましたが、それは稀なことなのですよ」
白狐の九尾である銀は幽玄橋で人の赤子を拾い育て、恋が芽生えて夫婦になったものの、若葉は病に罹り、若いうちに死んでしまった。
だが長い時を経て今度は白狐として――妖として転生して前世の記憶を保持しつつ、今も銀と共に在る。
…憧れていたのかもしれない。
そんな美しい未来を。
「そう…ですね。僕は楽しいことしか考えてなかった。雛ちゃんが僕を覚えてくれていたり、僕がすぐ雛ちゃんを見つけられるそんな甘い未来を…」
唇を噛み締めて俯いた弟の頭を、兄ふたりは優しく撫でた。
輝夜の目には、天満と雛乃の行く末が見えていた。
だけれども、それに干渉してはならない。
ただただ見守り、おかしな道筋を辿らないようにそっと導いてやることしかできない。
「僕は…」
どうしたいのだろう?
考えても、何も浮かばなかった。