幼なじみの不器用な愛情
隆弘は華に首を横に振って見せた。
「心配してた。怒ってる奴なんて一人もいなくてさ。みんな華が元気でいるか心配してた。店長もかなり心配してたぞ?しばらく華のロッカーは誰にも使わせなかったんだ。」
「・・・そうなんだ・・・。」
華の瞳が再び潤む。
「今度一緒に行こう。俺の実家と、カフェと。」
「・・・うん。」
一瞬、華が返事に詰まった。
「・・・ん?」
隆弘が気づき華の方を見つめる。
華は観念したかのように本音を打ち明けた。

「見るのが怖いの。本当は・・・あの家を・・・」
隆弘が華の肩を抱く。
「この5年間、一人で頑張れた。でも一人に慣れたわけじゃない。本当はまだ怖い。完全に忘れることなんてできない・・・。」
「華・・・」
「失望した?こんな私・・・」
「しないよ。そんなに簡単な過去じゃない。それに、簡単に乗り越えられるような経験じゃない。でもさ、忘れてないか?」
隆弘が優しいまなざしのまま華を見る。
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