幼なじみの不器用な愛情
隆弘は見つけた厚紙を使って華の体をあおぐ。
「水分摂ったほうがいいな。」
「・・・寒い・・・」
「寒い?」
引っ越し作業で隆弘は汗をかいているほど部屋は暑かった。
華の手先に触れると氷のように冷たい。
「熱中症かな?気持ち悪い?」
「少し。貧血だと思う・・・大丈夫。少し休ませて。」
そう言って華は目を閉じた。
隆弘はすぐに近所の自販機でイオン飲料を買い、車に積んでいた自分の服の中から薄手のパーカーを見つけて部屋へ戻った。

二人で暮らすには十分な広さのマンションの一室。その広さから家族で住んでいる所帯が多い。

隆弘は走って部屋へ向かうと華が目を閉じて真っ青な顔のままベッドに横たわっていた。

華が痩せ始めたのは夏の暑さが原因じゃないのではないかと隆弘は思っていた。
まだ、夜にうなされたり泣くことが多い華。最近は隆弘が起こす前に自分で起きてしまって寝室から深夜にリビングへ出ていくことも多かった。
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