いつも、ずっと。
先輩はしばらく何か考えていたようだったけど、強ばっていた表情がいくらか和らいだかと思うと、ふうっとため息を漏らしてから言った。



「まさかな?とは思うたけど……。やっぱり未来の狂言か。でも御子柴もなんで加担させられたっか。未来に弱味でも握られて、脅されたとか?」



う……図星。

だけど素直に認めたくはない。



「まあそがん感じ、みたいな。俺が明日美に知られたくなかことばバラすとか脅すけんが、仕方なく付き合うフリばすることに同意させられたとですよ。その契約ば解消するとは先輩の行動如何にかかっとるけん、早ようなんとかしてください!」



ここは重要だ。

俺だっていつまでもこんな理不尽な契約に縛られたくはない。

早く明日美に真実を伝え、嘘をついてしまったことを謝りたい。



青柳さんは俺と明日美の距離が近すぎるから、一度距離を置いてお互いの気持ちを再確認した方がいいと言っていた。

あのダブルデートから約一週間。

もう既に俺は明日美に会えないこと、自分から連絡できないことに多大なるストレスを抱えている。



明日美、インフルエンザもう治ったか?

高熱にうなされ、辛かったんだろうな。



「俺もできるならそうしたかとけど、仕事のこととか都合のあってな。今すぐって訳にはいかんとさ。御子柴にも言うたやろ?仕事の目処のつくまでは無理って」



確かに、先輩は今大事な仕事を任されているらしいけど。

でも仕事ばかり優先させてきたから、青柳さんが暴走し出したんだろ?

ただでさえ東京と長崎で離ればなれだし、不安なんだろう。



「いやいや、先輩もいろいろ大変やろうと思うけど、青柳さんのことももっと大事にしてやらんですか。今すぐプロポーズすっとが無理っていうても、その意思くらい示してもよかと思いますけど。それだけでも安心させらるっとじゃなかですか?」



「俺は折に触れて未来に気持ちば伝えてきたつもりけど。未来だって俺が今大変な仕事抱えて忙殺されとるって知っとるし。きっと俺の考えば理解してくれとるって信じとったとけどな」



分かってないな先輩。

青柳さんの気持ちをきちんと理解してないのは田代先輩の方だ。

二人がいつもどんな話をして、どういう風に一緒に過ごしているのか知らないけど、先輩の考えや思いの全てが青柳さんに伝わっているとは思えない。



「仕事の目処のつくとは、いつですか?」


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