いつも、ずっと。
俺からの問いかけに、しばらく考え込む様子を見せた田代先輩。

頭の中でいろいろ整理しているのだろうか。

久し振りに会った先輩の顔には疲労の色が見える。

今日も仕事を終えて飛行機に飛び乗って帰ってきたのだろう。

青柳さんとの意思疏通が上手くいってないのも無理はないのかも。



「そうだな……。少なくともあと二ヶ月くらいはかかりそうだけど。俺も勝負かけとるけん、失敗する訳にはいかん。俺と未来のためにも」



二ヶ月!?

そんなにかかるのか。

俺はそんなに待てない。

青柳さんだって、同じじゃないか。



「そんなら、その前にできることは?青柳さんが精神的に追い詰められとるって先輩も分かるでしょう。やっぱりプロポーズだけでも先にしとった方が……」



「悪かけど。プロポーズする時期は自分で決めとるけん。それは譲るわけにいかん。それまでの間、未来には我慢させることになるやろうけど」



ああもう、この分からず屋め。

そのアンタのポリシーが青柳さんを不安をにさせているんだろーが。

そこをなんで解消してやろうとしないのか。



「先輩のせいで俺まで大迷惑ですよ。だいたい本当は俺じゃなくて瀬名やったとに」



「…………瀬名?」



あ、苛立ってつい溢してしまった。

危うく忘れそうになっていたけど、そろそろいい頃合いか。



「瀬名って、もしかして瀬名圭司のことか?どうしてお前の口から圭司の名前が出てくるんだ」



そりゃそうだよな。

ここで俺がいろいろ説明するより、本人から言わせた方がいいだろうから呼ぶか。

アイツの携帯をワンコールだけ鳴らして合図した。



「どうしても先輩に会って話したかけんセッティングしてくれって頼まれてたんですよ。あとはアイツから聞いてください。あ、来た」



入り口の方から歩いてくる姿が見えた。

先輩の顔から色が消えた、そんな感じがした。

無表情っていうのか……。

怒りの感情をぶちまけられるのかと思っていたから、怒鳴られなくて少しホッとしたけど。

その無表情が心に秘めた静かな怒りを表してるような気もした。



「てっちゃん、久し振り。大事な話合いの場に突然現れてごめん。どうしても、てっちゃんに言いたかことのあって押し掛けた」



「圭司……。お前よくも堂々と俺の前に出てこれたな。今更何の用?お前の顔なんか見とうもなかったとけど」



先輩は表情も変えず言い放った。



< 49 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop