いつも、ずっと。
「友也くん、今日ここで話したことは明日美に言わんけん。友也くんの話も聞かんかったことにする。友也くんと明日美の二人の関係に親の私たちが介入するとは……ね。」



「友也。本気で明日美と一緒になりたかって思うとなら、明日美にお前の気持ちば伝えてこい。ただし、今から福岡に行くとはなしぞ。次の休みにでもどがんかせろ。連絡先は俺らだけじゃなくてツテくらい探せばあるやろうで。明日美と気持ちば通じ合わせることの出来たらまた改めてここに来い。今度はお前一人じゃなく、明日美と二人でな」



おばちゃんも、おじちゃんも……。

不甲斐ない俺を突き放すこともなく、親身になってくれて本当に感謝しかない。



「分かりました。お二人の期待に応えるためにも、どがんかします!」



「明日美は慣れん場所で仕事頑張るとやろうけん、お前も教師という職ば疎かにすんなよ。恋愛もそりゃ大事やろうけど、男は仕事してなんぼやけんな。好きな女ば守るためにもしっかり働かんば。よかか?よう肝に命じとけ」



そうだな。

ここで大事な仕事を投げ出してまで明日美の元へ行くなんて、無責任な行動はできない。

週末まで我慢だ。






自宅の部屋で一人、考えてみる。



『明日美はずっとお前からの言葉ば待っとると思うぞ』



俺は明日美と出逢って十五年、一度も想いを告げたことはない。

それは、自分の人生プランを頑なに実行しようとしてきたから。

明日美のことを『好き』だと伝えるのは、プロポーズする時だと決め込んでいたから。



携帯を手にして、発信履歴を呼び出す。

今すぐ福岡に行けないのなら、電話しか方法が見つからない。

でも、また繋がらないかもしれない。

メールだったら電源オフでも受け取ってもらえるか。

ダメだろ、直接伝えないと意味がない。

もしも、今から電話して明日美が出てくれたら、言おう。

『好きだ』って。



履歴の画面を見つめながら、深呼吸して。

決心が鈍らないうちにと発信ボタンを押した。



『お掛けになった電話は……』



最後まで聞かなくても分かってる。

電源が入っていないんだ。



明日美の両親以外のツテ、といえばアイツしかいない。

瀬名、まだ病院だろうか。

まだ消灯前だろうし、試しにかけてみよう。



『ツー、ツー……』



話中か、こんな時に。

瀬名が誰と話していたか、この時の俺は知る由もなかった。




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