いつも、ずっと。
あ……見つけた。



ガラスケースの陳列棚を覗いて品定めをしている女性こそ、俺が探し求めていた人。

……………………明日美。



アクセサリーショップの店員と向かい合い、会話しながら何かを指差している。

気に入ったものが見つかったんだろうか。

明日美はあまりアクセサリーには興味がないと以前言っていたけど、こういう店にも行くんだな。

本当は興味がないわけじゃなくて、俺に遠慮してただけだったのかも。

もしかしたら明日美はいろんなことを遠慮したり我慢したりしていたのかも知れない。

俺の知らない明日美の一面を見たような気がした。



店員と話していた明日美がキョロキョロと店内を見回し、誰かに手を振って合図したように見えた。



一人じゃなかったのか。

誰かと一緒に買い物しに来たのだろうか。

明日美の視線の先にいる人物は、俺もよく知ってるアイツだった。



瀬名、お前がなんで明日美と一緒にアクセサリーなんか選んでる?

いや、アクセサリーと言うよりも……。

ジュエリーと言うべきなんじゃないか。



確かに明日美とアミュで待ち合わせしてるとは聞いた。

しかし、デートだとは一言も聞いてない。



明日美と瀬名と店員で話が盛り上がっているようだ。

店員がショーケースから商品をいくつか取り出し、真剣に話し合っている。



五分ほどして話が決着したのか、店員が奥に引っ込んでいった。

店員を待つ間も談笑する二人の姿に、胸の奥がジリジリと焼けつくような感覚を覚える。



最近、明日美の笑顔を見ていない。

いつも俺にだけ特別可愛い笑顔を見せてくれていたのに。

瀬名と笑い合う明日美がなんだか遠い存在に感じた。

もう俺にとびきりの笑顔を向けてくれることはないのか?

今すぐに駆け寄って、瀬名から明日美を奪い去りたい。

俺以外の男に、近づくなって……。



奥から店員が再び現れ、小さな紙袋を大事そうに持ってきた。

瀬名が会計をしてその紙袋を受けとる。



「明日美が自分のアクセサリーを買ったんじゃなかったのか……」



店から少し離れたところで瀬名が明日美に声をかけて、その紙袋を明日美に渡そうとしてる。

そしてためらう素振りも見せず、その紙袋をあっさりと受け取る明日美。



なんで?

瀬名が明日美にプレゼントしたのか?



もうこれ以上は黙って見ていられない。

迷うことなく二人の元へ急ぐ。


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