いつも、ずっと。
「御子柴……」



二人に声をかける前に俺に気がついたのは瀬名だった。

さっきまで瀬名と笑い合っていたのに、俺の顔を見た途端に戸惑いの表情を浮かべる明日美。



「約束の時間は三時やろ。まだ……」



いまの時刻は二時四十七分。

確かにあと十三分あるけど、だからなんだ。



「まだなんか用事でもあると?」



瀬名は何か企んでいるのか、意味深に俺と明日美を交互に見てから言った。



「んや別に。俺の用事なら済んだし、あとは二人でご自由にどうぞ」



俺と明日美を残し去っていこうとする瀬名。

なんだ、最初からそのつもりだったのか。

細かいことは色々と気になるが、俺は明日美と二人だけで話したかったから。

気を利かせてくれたのなら、有り難く……。



「待って瀬名くん!」



明日美が瀬名を引き留めようとする。

どうして?



「お願い瀬名くんまだ行かんで。ここにおってよ、お願い!」



明日美の言葉を無視できずに立ち止まった瀬名。

俺と二人きりになるのが嫌なのか……。

明日美が行くなと言うのに、まさか俺が瀬名を追い払う訳にもいかない。



「ここじゃなんやし、移動すっか」




アミュプラザの中で立ち止まったまま話すのもなんだし。

最初の待ち合わせ場所である高架広場へ。



今日は雨は降っていない。

梅雨の中休みといったところだろうか、空は厚い雲に覆われ晴れ間は見えないけど。



「明日美、お帰り。この前俺が言ったこと覚えとる?俺、明日美に言わんばことあるし、ゆっくり話たかとけど」



「……今更、何?私たちもう契約解除してしもうたし、私はもう友也の偽者彼女ですらなかよ」



ああ、そんな軽蔑するような目で見られるなんて。

俺に対する不信感はかなり強いようだ。

やっぱりこんな場所では落ち着いて話せない。

どこか別の場所に移動しなきゃ……。



「契約って……未来さんと御子柴のことじゃなかったとか?」



瀬名には俺と明日美はお互いの気持ちを確かめていないと言ったけど、俺たちの付き合いが契約だったとは言っていない。



「私と友也の関係は、偽りやったと。だけん友也が未来と付き合おうがどうしようが私の知ったことじゃなかし。つまり、私がどうしようが友也にも関係なかよね」



「ちょっと待って明日美。だけんがそのことについて二人で話したかっさ」



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