目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「そうなんですか?私はてっきり化かされたとばかり……で、プロポーズをするとか?」

手帳を下ろし、メガネをくいっと直した三国さんは、いつものように冷静に言った。

「うん」

「あ、なるほど。別れなければならない事情とはそういうことですか。なかなか、社長もやりますね」

「まぁね」

「で、どなたに?」

こういうことに興味のない三国さんが、少し身を乗り出した。
今度は会社に迷惑を掛けない人なんでしょうね、と目が言っている気がする……。

「大学時代の恩師の娘でね、大学4年の、22歳」

「ひょっとして、先日の葬儀の方の?」

「そう。彼女、一人になってしまってね。どうにかしてあげたいと……」

「同情ですか!?」

珍しく声を荒らげる三国さんに驚いた。
更に彼女は語気を強めて言う。
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