目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「ピッタリ……」

思わず独り言を言ってしまうくらい、ワンピースは丁度良かった。
だけど、間違いなく自分の物だと認識すると、今までの浮かれ気分が途端に萎えた。
初めての体験だと思っていることは、実は今までの日常で、大切な思い出や大切な人を忘れてしまっているのだ。
こんなに良くしてくれる夫のことですら……。

「百合。着替えた?もういい?」

ぼんやりしていると、不意にドアが叩かれ蓮司さんの声がした。

「あ、はーい。もう着替えたよ」

一旦現実に引き戻され、私は気を引き締めた。
駄目だ。
なるようにしかならない。
医者も蓮司さんも無理はするなって言ってたし、焦らないでおこう。
そう決めた直後、彼が部屋に入ってきた。

「あ……」

私を見て、何故か彼は一言発しそれから押し黙った。

「……蓮司さん?」

「……いや、ごめん。何でもない」

一瞬で表情を戻したけど、沈黙の違和感は拭えない。
でもそれが彼のどんな感情であるか、まだ他人以上妻未満のような私にはさっぱりわからなかった。
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