目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「これ、サイズぴったり……ね」

取りあえず話題を変えようとして言った言葉は、凄くバカみたいだった。
私の物なのに、当たり前じゃない!?
それに気付いた時はもう遅い。
端正な蓮司さんの顔が、次第にくしゃっとなり、切れ長の弧をえがく瞳が細く柔らかくなった。

「ぶっ!!くっ……く……あはははは!」

「そんなに笑うこと??ねぇ?」

笑いすぎ……ちょっと失言したくらいで酷すぎない?
ぷうっと、頬を膨らませ目力を最大限行使してみた。
ま、こんなことしても怖くはないんだろうけど。
と思ったけど、蓮司さんはすぐに真顔になり慌てて謝ってきた。

「ごめん!あんまり、百合が可愛いく言うから……」

「かっ!か……」

だから、止めてください。
これ以上そういうこと言わないでよっ!
軽く睨んでみても、彼はニコニコと何故か愛しそうに微笑むだけ。
記憶を失う前の私は、この完璧夫の歯の浮くような言葉にどう対処していたのだろう。
早く記憶が戻ればいいのに。
そうすれば、こんなに熱に浮かされたようにならなくてもすむに違いない。
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