目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「あれ?お昼足りなかった?さっきから食い入るようにパンを見てるけど。それ、買うんなら最後にしような?」

うっ……。
背後から蓮司さんの失礼な言葉が飛んでくる。
足りなくはないよ、足りなくは。
でも、美味しそうなモノには目が行くんです、女子は!!
喉元まで出かかった言葉を飲み込んで私は大人の対応をした。

「最後って……何か用事があるの?」

「実はそうなんだ。友人がやってるギャラリーがあってね。そこに絵を頼んである」

「絵!?」

その私の様子に蓮司さんが笑う。

「それは《絵》と驚きの《え?》をかけているのか?」

「……いえ、たまたまですが」

少し呆れて返した。
そもそもお笑い偏差値は高くないし、《絵とえ》を掛けることで笑わそうとも思っていない。
ていうか、少しも面白くない。
だけど、彼には私の表情こそが面白かったらしい。
既に半笑いだったけど、もう顔をくしゃくしゃにして笑っていた。
< 27 / 285 >

この作品をシェア

pagetop