目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「ごめん!そうだよな。出会った頃の百合のイメージがあるから、どうしても、な……」

「出会った頃?」

「俺は八神教授の教え子だったからね、度々家にお邪魔してた。その時、何度も百合に会ってる。当時君はまだ高校生で俺にとっては子供のイメージが……」

高校生は子供だろうか?
それとも、私が色気も何もない子供だったからそう言うのか。
迷った挙げ句、その疑問は口にしないことにした。
聞いてしまうと、激しく落ち込みそうな気がしたから。
そして「結構前に会ってたんだね」と、無難に一言だけ返しておいた。

蓮司さんは真っ直ぐ前を向いたまま、1度だけ頷いた。
それが、そこから先を話したくない、という感じにも見えて私も口をつぐむ。
結局彼のことを思い出せば、それも繋がってわかること。
だから、敢えて今聞く必要もない。
でもーー。
それを話したがらない蓮司さんの様子には少し疑問が残った。

多少の気まずさを残しつつ、私達は別荘に戻ってきた。
夕食の支度をする間、寝室で横になれば?と勧められ、私は大人しくそれに従うことにした。
申し訳ないなとは思ったけど、約一週間の入院生活でなまった体には既に限界が来ている。
手伝っても足手まといになることは間違いなかった。
私は全てお願いして、早々に2階の寝室へと向かった。
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