目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
扉を開けると寝室の窓から、微かに夕日が射し込んでいるのか見えた。
私は誘われるように窓を開け、バルコニーに出る。
日の傾きかけた建物に夕日が当たる姿は、サントリーニ島のイア地区を思い起こさせる。
海の見える風景も、この白い建物も、夕日が当たる情景も、全てが私の心を和ませ優しい気持ちにしてくれた。

『大切にされている』

どう考えても、それは間違いない無さそうだった。
昼間の絵だって、私と父の思い出の為に柾さんに頼んでくれたのだし、何より、忙しい社長さんが時間を削ってまで一緒にいてくれる。
これ以上の幸せがあるだろうか。
記憶がないことを除けば、全てに恵まれた女なのではと思ってしまう。
ただ、一つ気になるのは、大切にされていることと、愛されていることは別物だということ。
さっきの車の中での話。
あれを聞くと、私のこと子供とか妹?そんな風に思ってるという感じ……。
そう考えた途端、心の奥に何かが刺さった。
ズキズキと感じる痛みは、打ち付けた後頭部ではなく、溝尾付近に感じ、更に胃の奥に何か違和感も広がった。
……調子にのって食べ過ぎたのかもと、呑気に考えてみると、何故か痛みも違和感も消えた。
考え込むのがダメなのかな。

その結論に至った私は、ひんやりとしてきたバルコニーで、無心になり夕日と海を眺めた。
肌に当たる海風が気持ちいい。
ぼんやり景色を眺めていると、暫くしてドアがノックされ、低い声が私を呼んだ。
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