目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「おはよう。良く眠れた?」

リビングには既に蓮司さんがいた。

「お、おはよう……うん。眠りこけました……」

もう、死んだように眠りましたよ?と思いながら、恥ずかしそうに笑っておく。
すると、蓮司さんはとても幸せそうな顔をして、すぐにキッチンへと向かった。
カチャカチャと食器の重なる音がしたから、きっと朝食の準備をしてくれているんだと思う。
申し訳なく思い後を追おうとした途端、彼が姿を現した。

「ほら、ここに座って?」

反論する間もなく、椅子に座らされる。

「え、うん。でも……」

「いいから。昨日のパン、温める?どれにする?オレンジジュースは?コーヒー?紅茶?サラダのドレッシングは?玉子の目玉焼きは固め?柔らかめ?」

怒濤の質問攻撃に、どれから答えていいかわからない。
とりあえず、最後の質問にだけ返した。

「め、目玉焼きは、柔らかめっ!黄身にうっすらと白い膜がかかるくらいっ!」

「了解しました。お嬢様」

優雅に、でも少しおどけて一礼した蓮司さんは、キッチンで何やらごそごそとすると、5分後、注文の品を持ってきた。
< 59 / 285 >

この作品をシェア

pagetop